WEB VISION OKAYAMA

業界大予測日本銀行岡山支店 福地慶太氏

岡山県経済動向 新たな成長に向けて、先を見据えた戦略を

  • 福地慶太氏

 謹んで新年のお慶びを申し上げます。

 昨年のわが国経済を振り返りますと、輸出・生産は、新興国経済の減速の影響などから鈍さがみられました。企業収益は、原油安に伴う交易条件の改善や内需の堅調さを背景に過去最高に近い水準で推移し、こうしたもとで設備投資は緩やかな増加基調を続けました。企業収益の好調さは雇用・所得環境にプラスの影響を及ぼしました。すなわち、有効求人倍率は上昇し人手不足感は強く、失業率は構造失業率近傍の3%程度となっています。実質賃金は、名目賃金の上昇に加え、消費者物価の小幅下落を映じて、プラス幅を拡大しています。こうした雇用者所得の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しました。以上のように、所得から支出への前向きの循環メカニズムを通じ、わが国経済は基調としては緩やかな回復を続けました。

 岡山県経済は、ウェイトの高い輸送用機械における生産停止の影響から全国に比べて鉱工業生産が大きく落ち込みました。もっとも7月の生産再開以降は、徐々に生産水準が引き上げられています。需要項目別には、輸出では、新興国経済の減速などを背景に減少が続きましたが、緩和的な金融環境のもと、設備投資、住宅投資で持ち直しの動きが続きました。また、個人消費については、総じてみれば良好な雇用・所得環境が維持されたことを背景に、底堅く推移しました。

緩やかな回復が続く

 本年のわが国経済は、大型経済対策による財政拡張と、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」による強力な金融緩和を背景に、企業部門・家計部門ともに、所得から支出への前向きな循環メカニズムが働き、潜在成長率を上回る成長が続くとみられます。すなわち、公共投資は、地震の復興対策や経済対策に伴う各種インフラ整備などから、増加を続けると思われます。輸出と鉱工業生産は、今後の海外経済の成長見通しを踏まえますと、輸出が緩やかに増加し、鉱工業生産も緩やかな増加に向かうことが期待されます。設備投資は、高水準の企業収益や緩和的な金融環境、経済対策の効果などを背景に、引き続き緩やかな増加を続けると予想されます。この間、雇用環境は、潜在成長率を上回る経済成長が続くもとで改善を続け、個人消費については、緩やかな増加が見込まれるところです。

 岡山県経済についても、企業部門・家計部門ともに、所得から支出への前向きの循環メカニズムが維持され、緩やかな回復が続くとみています。すなわち、設備投資は、緩和的な金融環境のもと、持ち直しの動きを続け、また個人消費は良好な雇用・所得環境に支えられて底堅さを増していくものと思われます。この間鉱工業生産は、輸送用機械における生産水準が高まるにつれ、全体として持ち直していくことが期待されます。

POST-TRUTHな時代であっても

 「不確実性の時代」。昨年は、今から40年前に流行したこの言葉を思い起こさずにはいられない出来事が続きました。例えば、ブレグジット(EUからの英国の離脱)であり、米国大統領選の結果であり、事前の予想が覆った事例が幾つもみられました。英国のオックスフォード大出版局は、昨年を象徴する言葉に「POST-TRUTH」(ポスト真実)を選びました。この言葉は、「客観的事実よりも感情的な訴えかけの方が世論形成に大きく影響する状況を示す形容詞」とのことです。実際、様々な場面で、実現に疑問符が付く主張や事実に反するスローガンを度々目にしたことから、世界を覆う雰囲気をよく示している言葉だと感じます。今年も欧州では国の在り方を決定付ける選挙が続き、「ポスト真実」な政治スローガンや政策を多く目にすることでしょうが、「不確実性の時代」と嘆息してばかりはいられません。

 わが国は、次の成長戦略が見通し難い中で、人口減少、生産性の低下など、経済環境上幾つもの制約・障害要素に直面しています。わが国の現状に対して、レッド・オーシャンに浮かぶ島国といった認識も少なくないのではないでしょうか。生産年齢人口が減少する時代にある以上、人手不足はもはや経済循環的な問題ではありません。構造的な問題として捉えるべきでしょう。こうした中にあって、構造的な問題への対処を含めて、先を見据えて、レッド・オーシャンを生き抜く製品開発、販売戦略、経営戦略、設備投資を含む投資戦略、地域づくりについて、検討し、着実に実行に移す方々が岡山にはいらっしゃいます。

 いつの時代も「不確実性の時代」であり、不安がつきものです。しかし、先人たちは、累次にわたる干拓事業、臨海部での大規模な工業地帯の建設、交通網の整備による交通の要衝化など、先を見据えて国づくりをされてきました。その結果、仕事が生まれ、人が集まり、当地の繁栄に繋がってきました。

 美しい自然、災害の少ない地の利を活かし、現下の金融環境を支えに、今年も次の成長に向けて多くの矢が高々と放たれることでしょう。私ども日本銀行岡山支店もこうした動きに少しでも貢献できるよう、職員一丸となって、地域経済の分析や情報発信など、様々な業務に精励して参ります。

本誌:2017年1.1号 22ページ

PAGETOP