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巻頭特集Ⅱ働き方改革事例 三蔵農林

過疎地で従業員数400人規模 1日3時間以上いつでも出勤OK

  • 手摘み作業にパートは重要な戦力

 働き方改革で今でこそ脚光を浴びているワーク・ライフ・バランス(WLB)だが、20数年前のバブル期から既に取り組み成果を上げている企業がある。マッシュルーム生産で国内シェア40%を占める㈲三蔵農林(瀬戸内市牛窓町鹿忍3481)だ。

 片岡進会長が1974年に岡山市東区下阿知で創業した。当時から「シンクグローバル・アクトローカル」の理念で、本場の欧州から技術、設備をどん欲に吸収。たい肥づくり、植菌、培養、栽培、収穫まで一貫生産、農薬を使わないという独自の路線を追求。食の西洋化による需要増と相まって確固たる地位を確立した。その後、事業を拡大しようと1990年に現在地に移転した。

 しかし、すぐさま壁にぶつかることに。農産物ゆえに365日人の目で生育状況などを確認し新鮮なまま手摘みしなければならない。特に収穫作業で多くの人材が必要だが、当時はバブル期で全国的に人手不足が深刻だった。ましてや牛窓町の田舎、8時間フルタイムで働いてくれる正社員が集まらなかった。そのため、収穫作業が夜中の1、2時まで続き長時間労働を強いられていた。

 そこで目を付けたのが、子育てに忙しい若い女性、体力的に重労働、長時間労働が困難な60歳以上の高齢者。労働市場から埋もれていたそれらの層をパートとして掘り起こし戦力化しようというもので、受入体制としてWLBの導入に踏み切った。

 具体的には、勤務時間1日4時間以上(現在3時間以上)かつ自由出勤、昼でも夜でも好きな時間帯に好きな時間だけ働けばよいという当時としては画期的な労働形態を打ち出した。子どもを保育園に預けている時など、わずかな時間でもよいから働いてほしいという思いだった。また、出勤するかどうか、勤務可能な時間帯などの連絡は当日午前9時までに行えばよい。この日が忙しそうだから、会社側から来てほしいという指示はしない。自由出勤は正社員にも一定条件の範囲内で認めている。さらに、公共交通機関も十分ではなくバス4台(現在2台)で送迎した。社名入りのバスが町内を走り回り宣伝効果も十分だった。

勤続20年以上が70人

 そのため、「働きやすい」と口コミで住民に広がり、パートが瀬戸内市を中心に順調に集まるようになった。それに伴い正社員の負担も減り、近年の採用難の中でも新卒も毎年2、3人採用している。過疎地にもかかわらず現在380人(正社員133人、パート247人)が働き、旧牛窓町内随一の規模を当て込んで昼の休憩時間になると業者が弁当、魚介類、野菜などを販売に来ている。

 また、一度採用した人に働き続けてもらうため、農繁期に1カ月程度の農作業休暇も認めるなど長期休暇の制度もある。そのため、定着率も高く勤続20年以上の従業員が約70人も在籍している。人の手や経験に頼る部分が多いだけに、定着率の高さはそのままノウハウの蓄積、品質に直結する。売上高は従業員数に比例し毎年3~5%増加。2016年8月期は年間生産量2500tで売上高18億5000万円(前期比5.3%増)。「もともと農業関係、中小企業という人集めに不利な条件が揃っていただけに、ここまで徹底して働く人の都合に合わせた制度にしないと人が集まらなかった。それが現在の時流と重なり結果的に良かった」と振り返る。

出荷先リスク分散で安定雇用

 同社ではそれぞれの従業員の連絡をもとにその日の出勤者数を集計、今までの記録では平日で230~250人、土、日曜で170人前後だ。当日の社員数が分かれば可能な生産量を算出、市場での需要動向を加え役員や担当者でその日の出荷量などを決める。出荷先は東京、大阪、名古屋、神戸、福岡など卸売市場向けが70~80%で地域や業種を分散。大口取引先などに過度に依存すると先方の景況に左右され無理な要求ものまざるを得ない。従業員へのしわ寄せで生産効率が落ちては意味がない。片岡社長は「ミツクラの商品は既にブランド化しており需要は安定、年間通し繁閑の差もなく平準化し社員に残業や意に沿わないシフトなどを強いる必要がないこともWLBにつながっている」と話す。今後は17年に従業員数400人、生産量2600t、五輪の年の20年に500人、上限の3000tを見込む。女性活躍で管理職も育成していく。


メモ
住 所 瀬戸内市牛窓町鹿忍3481
代表者 片岡信之
資本金 1130万円
創 業 1974年
従業員 380人

本誌:2017年1.1号 12ページ
関連リンク:三蔵農林

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