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ニワトリ受難

 3月末のある日、いつものようにニワトリを庭に放したまま買い物に出掛け2時間後に帰宅。家に近づくと普段見かけない犬と目が合いました。その犬は犯罪者特有の暗い目つきをしていました。

 「しまった!」と思いつつ車を家につけ、門扉を開けると別の犬が遁走、辺り一面羽毛が散乱していました。6羽のうち2羽が即死、3羽は背中を咬まれて重症、1羽だけ鳥小屋の陰に隠れて難を逃れていました。

 感傷に耽る暇もなく3羽を獣医に連れて行きましたが、注射と投薬だけで無惨な裂傷を縫ってはくれません。2日後、出血は止まったものの傷口がパカッと開いたままではどうにもならないと思い、自分で縫合することを決意。ひざの上に乗せ、皮膚を引っ張り寄せて1cm間隔ぐらいで縫い合わせてやりました。

 医学の知識など全く無いド素人、もちろんこんな経験は生まれて初めてのことですが、ニワトリの命がかかっていると思うと案外てきぱきと事を運ぶことができました。使用器具は縫い針と絹糸、ハサミとピンセット。麻酔はなし。

 術後、創傷面の保護と羽毛を失って肌丸出しの背中から体温が奪われるのを防ぐため、特性パッドを取り付けてやると、何だか私の気持ちも楽になりました。あとは感染症が起きないかどうかですが、幸い鳥類は体温が42度もあって化膿し難いと聞きます。

 受傷した翌朝、敷いていた新聞紙を取り替えようとしてニワトリを持ち上げたら何と卵が転がっていました。悲しくもあり、またそこに一筋の希望があると感じた瞬間でした。もう無理に卵なんか生まなくていいから早く元気になって、と願わずにはおれません。

本誌:2005年4.11号 14ページ

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