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連載記事スローライフ~午後4時の窓辺から~

水清ければ魚棲まず

 早春の播州路の風物詩と言えばイカナゴの釘煮に尽きます。隣県の釘煮のことなどまったく知られていなかった岡山でも2000年ごろから、うわさがうわさを呼んで、家庭で釘煮を作るのが流行し始め、どこのスーパーでもイカナゴのシンコ(稚魚)が並ぶようになりました。ところが近年イカナゴはまったくの不漁で、シンコの値段が今ではキロ当たり4000~5000円もするうえ、そもそも入荷自体がレアになってきました。

 瀬戸内海からイカナゴが激減してしまった原因について兵庫県の水産資源管理当局の説明では、海水がきれいになり過ぎた結果だと結論づけています。海水中の窒素やリンなどの栄養塩が減った結果、プランクトンが減り、それを餌にするイカナゴも減ったという負の連鎖説です。

 岡山のローカルニュースでも海苔について同じような話を聞きました。児島湾で養殖されている海苔が黒々と着色することなく色落ちが激しいのは、河川から流れ込む水がきれいになりすぎたせいだというのです。海水の貧栄養化に伴うイカナゴや海苔の不漁に対して兵庫県や岡山県当局は、今後は排水中の窒素やリンの含有率を人為的にコントロールする、つまりはきれいになりすぎた海に栄養塩を補給することでイカナゴ不漁問題、海苔の色落ち問題に対処する方針のようです。

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本誌:2021年4月5日号 16ページ

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