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連載記事スローライフ~午後4時の窓辺から~

リニューアル後の大原美術館

 昨年は倉敷の大原美術館がマスコミにしばしば取り上げられ、あらためて倉敷という首都から遠く離れた都市で生まれ育った珠玉のような美術館が、そこに住んでいる人々にとっていかに心のオアシスになってきたか、その存在の大きさが番組や記事を通じて垣間見られました。

 旧年中はリニューアルオープンした大原美術館を訪れる機会がないまま新年を迎え、正月3日の日曜日に出かけてみました。コロナ禍の再燃で案外お客が少なく、ひとつひとつの、多くは見慣れた作品をじっくり鑑賞することができました。

 リニューアル工事は主として空調設備の更新だったと思いますが、展示方法も画期的に改善されていました。ギャラリーの照明が相当落とされ、逆に作品それぞれにスポットライトが当たっている。すると今まで何十年も通り一遍の絵として鑑賞してきた作品の中の人物像が俄然生気を帯びて、彼ら/彼女らの人となりや人生観までがキャンバスから飛び出して私に何かを訴えてきます。

 「今までいったいどれだけ薄っぺらな見方しかしてこなかったのか?」という反省と同時に、自分自身年を取ってきていろいろなものを諦めざるを得ないことがはっきりしてきたことに伴い、ようやく画家が描こうとしたモノそのもの=その作品の本質が私の目にも見えてくるようになったのかもしれません。

 「受胎告知」、「睡蓮」、「カレーの市民」、私が小学生のころ初めて大原美術館に行ったときからずっとそこにあったからこそ、作品とともに私自身もゆっくり成長してきたことが分かるのです。

 現在大原美術館は「第三創業期」の事業を推進しているとのことです。具体的には本館にほど近い場所にある中国銀行支店跡の建物を整備し、児島虎次郎の作品と彼が収集した古代エジプト・西アジア美術品が一挙に公開されるというものです。

 実際、大原美術館というと印象派およびそれ以降の西洋絵画で有名ですが、中近東から中国に至る広大な地域で出土した工芸品や彫刻の圧倒的なスケールと質の高さには驚かされます。展示スペースの拡大によってより多くの作品が収蔵庫から解き放たれて人々の目に触れるようになるとき、そのとき我々は大原孫三郎と児島虎次郎の友情の深さに改めて驚嘆するのではないかと思います。

本誌:2021年1月18日号 12ページ

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