WEB VISION OKAYAMA

巻頭特集EVシフト 変わる業界の勢力地図

部品点数減少で業者存亡の危機 飛躍期し能力増強する企業も

 岡山県下の企業で、世界的な電気自動車(EV)の普及に対応する動きが活発化してきた。EVはガソリン車と比べ部品点数が大幅に減少、従来の自社の技術・製品が不要となる業者にとっては死活問題だ。一方で追い風ととらえ生産能力の増強を急ぐ事業者も現れている。EV化が今後地元の自動車関連産業の勢力地図を塗り替える可能性が出てきた。

三菱水島がEV生産拠点
非エンジン系の受注強化

 三菱自動車工業㈱水島製作所(倉敷市)は、2020年以降投入予定の軽自動車のEVを生産する予定。さらにEVかプラグインハイブリッド車(PHV)で検討中の小型スポーツタイプ多目的車(SUV)の新車種も水島での生産が有力視されている。さらに、日産自動車㈱(横浜市)、仏ルノーとの3社連合でも22年までにEV12車種を投入する計画で、このうちの何車種かは水島で生産すると予想される。三菱関係だけみてもEVシフトの流れは止まらない。
 これら新車投入による水島の生産台数の増加は一見地元部品メーカーにとってプラス材料にみえるが、EVとなるとそうもいかない。EVは部品点数がガソリン車と比べ3分の2とも2分の1ともいわれる。特にエンジン、変速機などがモーター、電池、インバーターなどに取って替わられ不要となるため、EV化に対し各社の危機感は強い。
 ヒルタ工業㈱(笠岡市、昼田哲士社長)は、事業の柱の一つにエンジン部品があり、三菱自動車の1次サプライヤーの立場を誇る地元大手の同社でさえ影響は大きく対策を懸命に模索している状況だ。直接のEV関連部品の受注活動に力を入れるとともに、EVシフトでもなくならない分野、特に走行中の車体を安定させるサスペンションなど足回り部品の受注を強化する。また、操作全般の電動化の流れに対応した電動式パーキングブレーキの開発で注目を集めたが、こうした非エンジン系全般を拡充する。同商品は独自製品で他社製品より小型・軽量を実現した高付加価値製品で競争力がありガソリン車、EV問わず今後の新車採用でも有利になりそうだ。
新興工業㈱(総社市、笹沼靖憲社長)も今後EVシフトに伴ってエンジンの動力を車輪に伝えるプロペラシャフトなどの需要減をにらみ、同様に減速装置、ブレーキ関連などEVシフトしても残る部品の受注を強化している。

レイアウト変更で効率化
取引拡大に向け規模拡大

一方で、EV関連の部品を扱う企業はチャンスととらえ投資を活発化させている。薄板・小型プレス専門の㈱賀陽技研(吉備中央町、平松稔社長)は、インバーターなどEV関連部品の加工の需要増に対応し昨年1年間かけて本社工場のレイアウトを変更、生産性を高めて能力を従来の1.2~1.5倍に増強した。分散していたプレス機を集約し作業効率を高めたほか、出口と入り口を分けて一方通行にしモノの流れもスムーズにした。従業員も5月までに3人増やし23人にする。
 10年前の前身の会社の時からEV関連の加工を手掛け、現在では売上高の約2~3割を占めるまでに成長させてきた。EVシフトはさらなる本格的な飛躍のチャンスで、売上高 を現在の2億8000万円(2017・6期)から今後20年間で数十億円にまで増やしたい考え。世界的に自動車メーカーの大型化が進む中で発注ロットも大きくなると予想し、「ある程度規模が大きくなっていないと、大手との取り引きについていけなくなる」との読みもあっての戦略だ。 
 コンデンサーを中心に電子部品・機器の製造を手掛ける㈱指月電機製作所(兵庫県西宮市、伊藤薫社長)の子会社の岡山指月㈱(総社市、同社長)は、EV、ハイブリッド車向けのコンデンサーの需要増を見込み生産能力を現在の6倍に引き上げるため、昨年7月に本社敷地内に第3工場(約5000㎡)を建設した。投資額は約10億円。現在はまだ稼働していないが、将来に向けた先行投資だ。それだけ期待も大きい。
地元企業のEV対応の動きは、行政も強力に後押ししており、ますます拍車がかかりそうだ。昨年8月に岡山県などの呼びかけで部品関連会社など約80社が集まり連携組織「岡山県自動車関連企業ネットワーク会議」が発足した。同会議を通じてEVの共同研究や販路開拓などを支援している。県は18年度に優遇措置を設けEV関連企業の誘致にも力を入れる。

EV化速度読みばらつき
充電設備未整備で遅い

もっとも、EVシフトの速度に対する認識にはばらつきがある。「マスコミ報道が過熱しすぎ。危機感

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