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連載記事山田響子の魅力を引き出すコミュニケーション術

自分の内なる言葉と向き合う

 「伝えたいことが伝えられないもどかしさがあります」―。そんなふうにご相談に来られる方の多くが、「わたしには語彙力がないのが原因だと思います」と言われます。あの人は素晴らしいなあと感嘆するように、うまく表現している方と、自分と比べると確かにその方は豊かに表現しています。それに比べて自分の表現は足りないなあと思う。だから語彙力がないのが表現下手の原因だと思ってしまうのだろうと予想します。しかし「語彙力」のせいにするのは危険だなと思っています。語彙力は関係あるけれど、語彙力のせいではないと思っているのです。

 なぜなら、語彙力のせい、にしてしまうことで成長を阻むと思うのです。多くの方が、じゃあ語彙力を鍛えるためにこうしよう!と行動に結びつけることができません。まるで、語彙力のせいだから「仕方ない」とするために、語彙力がないと言っているように聞こえます。語彙力の鍛え方を知らず、語彙力を増やすための活動をするつもりもなく、語彙力がないからだなあとしてしまえば、そこで試合終了になってしまいます。

 もしも語彙力を鍛えたいと思ったらどうすればいいのでしょう?「語彙力を鍛える」というキーワードで検索してみると、「大人の語彙力ノート」という本がお薦めとして表示されました。拝見してみると、確かに「大人として知っているといい豊かな表現」がたくさん解説されているようです。この本の帯に大きく記されているような「ご笑納ください」「ありていに言えば」と言うような表現は、「お!なかなかやるな」と思わせることができるような表現ですし、大人として知っていると立場が異なる方との会話でも困ることはないでしょう。

 しかし、それがあなたの目指す「きちんと伝えたい」というシーンに生かせそうなものでしょうか?そうじゃないのではと私は思います。

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本誌:2023年2月13日号 17ページ

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