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連載記事スローライフ~午後4時の窓辺から~

お釣りの話

 今、このコラムのタイトルを書きながら、パソコンが提示する「釣り銭」という字面になぜ「釣る」という漢字が使われているのか、ふと疑問に思いました。「魚を釣る」のなら分かりますが、「お客を釣る」意味合いでもあるのでしょうか。

 そう言えば、昭和30年ごろ、まだ私が小学校低学年のころ、ときどき母から鍋に入ったままの総菜をお隣さんへお裾分けに持っていくよう頼まれることがありました。そのときお隣のおばさんが返してくれる鍋の中にはなぜかマッチが数本必ず入っていました。その心は?

 マッチの火は移る → うつる → おうつり → お釣り。つまり、「お返し」としてさし当たり何もないので、その気持ちを数本のマッチに託しました、という意味だったようです。「いじましい!」(いじけた感じがするほどみみっちい)と東京育ちの母が思ったかどうか。一方、お隣のおばさんはマッチ数本で「ちゃんとお返しはしたからね」と意地を見せたというところでしょうか。

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本誌:2021年3月8日号 11ページ

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