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連載記事杉山慎策の経営学考察

「差別化」について

 経営学では日常「差別化」という言葉を頻繁に使用する。しかし、調べてみるとこの元の英語は”Differentiation”である。この意味はケンブリッジ辞書によると、①the act of showing or finding difference between things that are compared(比較するモノとモノとの違いを見つけることあるいは見せること)②the process or fact of being different or making something different from other similar things(他のモノと違うという事実あるいはプロセス、あるいは、他の似通ったものから何か違うモノをつくること)③(of cells or tissue) the process of developing specialized structures or functions(細胞や組織が特別の構造や機能を作り出すプロセスのこと)を意味する。“Differentiation”は最近の英和辞書では「差別化」という訳を当てているものもあるが、本来は「違いを作ること、あるいは、違いを見出すこと」の意味である。「差別」という日本語に当たる英語は“Discrimination”という言葉である。この英語の言葉の意味は文字通り「差別」であり、英語を母国語として使用している国でも通常の会話ではあまり使用されない強い言葉である。

 江戸末期から明治時代にかけて優秀な若者たちは欧米の新しい「科学」の日本の導入に情熱を傾けた。津山の洋学を代表する一人である宇田川榕菴は「珈琲」「酸素」「窒素」「還元」などの新しい概念を日本語に翻訳した。同様に、第二次世界大戦後アメリカの影響下にあった日本では多くの経営学者(実務家を含む)が、新しい学問である「経営学」を日本に導入すべく苦心していた。翻訳された本は経営学の古典というべきセオドア・レビット、マイケル・ポーター、ダニエル・ヤンケロビッチ、ブルース・ヘンダーソンなどの著作である。

 筆者は長年資生堂に勤務させていただいていた。もう既に40年以上前のことなので一部の機密情報について記述することをお許しいただきたいと思う。

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本誌:2023年夏季特別号 29ページ

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