WEB VISION OKAYAMA

連載記事杉山慎策の経営学考察

バウムクーヘンと磯野長蔵

 コロナのようなパンデミックは大きな変化を生み出す。人の歴史はパンデミックとの戦いとも言える。また、戦争も思ってもみないものをもたらす。今回のロシアによるウクライナへの侵攻では、ドローンという無人機が偵察や爆撃で大きな威力を発揮している。人が実際に乗っているわけではないので、ドローンに殺傷能力の高い炭疽菌のような細菌を搭載したり、小型核を搭載したりして、無機的に使用されるのではないかと危惧される。

 日本が関わった第一次世界大戦はある意味日本にとってラッキーな戦争であったと言える。ドイツはヨーロッパ戦線が主たる戦場であり、アジアまで手が届かなかった。その間隙をぬって、日本はドイツが支配していた山東省を陥落させ、マーシャル諸島など北太平洋でドイツが支配する諸島を占領した。「成功は失敗のもと」の格言通り、日本はこの戦勝に酔い満州の権益の確保やシベリア出兵などをしかけた。結局これが第二次世界大戦に結び付き、日本は灰燼に帰した。

 カール・ヨーゼフ・ヴィルヘルム・ユーハイムは1886年にドイツで生まれた。夜間職業学校で菓子作りを学んだユーハイムは1908年22歳の時に、中国のドイツの租借地である青島市で喫茶店に就職し、1909年自身の「ユーハイム」喫茶店を開いた。ユーハイムの作るバウムクーヘンは大成功した。1914年故郷から花嫁エリーゼを迎えた。同年8月にドイツはフランスとロシアに宣戦布告をし、第一次世界大戦が始まった。その後直ぐにフランスとイギリスも参戦した。日英同盟により日本もドイツに宣戦布告し、山東半島を占拠した。青島市は11月7日に陥落し、幸せな新婚生活をする予定であった彼らはドイツ人捕虜として大阪俘虜収容所に送られることになった。1918年には「スペイン風邪」を恐れ、捕虜全員を広島市広島県安芸郡仁保島村(現在の広島市南区似島)にある似島検疫所に送った。

会員申し込みはこちらから

本誌:2023年4月3日号 17ページ

PAGETOP