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連載記事山田響子の魅力を引き出すコミュニケーション術

スピーチを構成する3つの要素

 春はスピーチの季節です。経営者のスピーチトレーニングが連日続いております。どの経営者様も「人前で話す」ことが苦手で、それだけは勘弁してくれと逃げてきた、けれどそうもいかない状況になってしまった、と言ってトレーニングのドアを叩いてくださいます。

 逃げ回っている自分もお嫌だったと思いますが、逃げられない状況になるというのは、経営者として「立場」ができたということで、苦手の克服に誇らしげに挑戦してくださっています。

 スピーチはなんのためにあるのか?誰のためにあるのか?この問いにあなたはなんと答えてくださいますか?「お役目を果たす」それがスピーチの目的です。そしてスピーチは「聞き手」のためにあります。人の注目を浴びる場に立つのであれば「わたしが」よく見られたいし「わたしが」認められたい、という思考にどうしてもなってしまいます。

 でも、この「わたしが」になっているうちはうまくいきません。人ですからよく見られたい、評価されたいと思ってしまうのは自然なことです。わたしにもそのような気持ちが湧いてきます。でもこの「わたしが」を一旦置いておいて、いったいどんなお役目があるのだろう?と考えてみるようにしてほしいのです。

 主催者から「あなた」に、と時間が与えられる。そして、スピーチというものは誠に残酷なことに、否が応でもその場にいる全員の「時間」をもらうことになってしまいます。時間こそ命ですから、大袈裟な言い方をすると、その場にいる全員の命の一部をいただくわけです。そこには主催者の方から向けられた目的があります。そのお役目を果たすことを一番に考えてほしいのです。

 たとえば結婚披露宴で、変な下ネタや主役をいじるような発言でひんしゅくを買うスピーチがあったとします(実際よくある話です)。その話し手は「ここらでひとつ、笑いでも取っておいたほうが盛り上がるかな?」とか考えたわけです。つまり「自分が」ウケる、面白いと思われる、を優先したのですね。その結果、結婚披露宴のスピーチをあなたにとお願いされた「目的」に意識を寄せることなく、「お役目」を果たすことができなかったわけです。

 スピーチや話して伝えるシーンは3つの要素で構築されています。「コンテンツ」は、何をどんな順番で話すか、という話の組み立て。料理で言えば材料を揃え下ごしらえをして鍋に入れるとことです。「デリバリー」は人前で話すことそのものの技術。声や表現方法。料理で言えば実際に味付けをして、おいしそうに見えるように食器を選んで盛り付けるところと言えるでしょうか?

 スピーチが苦手だと思っている方やトレーニングに来られる方のほとんどが、この2つに意識を向けています。この2つをなんとかすればカッコ良いスピーチができるとも思っています。しかし、その前提となる「マインド」が最も大事です。このマインドとは主催者の意図を汲み取り、全員の時間をいただくことに感謝して、その場でお役目を果たしたいと思っている誠実な想いです。ぜひ、あなたの前にマイクが回ってきましたら、そのお役目に意識を向けて見てほしいと思います。

 お役に立ちたちたい、と思ったらその対象に純粋な関心が寄せられます。相手のニーズを知ろうと思ったら、相手の欲しいゴールに想いを寄せなければいけません。そしてその視点が原動力となります。

 では、自社で社員に訓示を述べるなどのスピーチはどうでしょうか?主催者から与えられた場、ではなく、自分の目的を達するために話す場面です。その場合も同様です。聞き手が得られるゴールに想いを寄せる。聞き手にどう感じてもらい、その結果どう動いてもらいたいのか。その感情や行動の変化はどうすれば生まれるのか?

 ここでも、テクニックより以前に伝えたいことを落とし込む「マインドの整理」が一番大切です。たとえテクニックが未熟であっても、聞き手に誠実な関心を寄せて心を込めて準備したスピーチは人の気持ちを動かす結果になります。ぜひ自信を持ってマイクの前に立ってください。

本誌:2021年4月12日号 17ページ

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