WEB VISION OKAYAMA

連載記事杉山慎策の経営学考察

行動経済学とシャープのブランド論4

 シャープは前述したように、暗黙の裡に完璧な消費者を想定している伝統的経済学に対する行動経済学の考え方をマーケティング理論においても実践することを強く主張しているのである。コトラー流のSTP戦略である、セグメンテーション(S)、ターゲティング(T)、ポジショニング(P)は本当に重要なのか、あるいは、妥当なのかを問うている。前回述べたように、多くのマーケティングはパレートの法則の上位顧客の20%が売り上げの80%を占めると言う理論を安易に想定して実践されている。しかし、事実はカテゴリーにより大きく異なる。シャープは多くのカテゴリーで調査に基づきこれが誤っていることを繰り返し、繰り返し述べている。私たちがシャープの提言から学ばなければならないことは「消費者のことを調べないで勝手にマーケティング理論を組み立てるな」ということである。往々にして、日本の企業は調査を軽視する。グローバル企業と比べて調査予算が恐らく一桁も二桁も異なる。「調査を基本にマーケティングを展開しないととんでもないことになりますよ」、というのがシャープの警告である。

会員申し込みはこちらから

本誌:2018年11月5日号 25ページ

PAGETOP